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大阪地方裁判所 昭和60年(行ウ)80号 判決 1987年10月15日

大阪市平野区長吉六反三丁目七番二三号

原告

津田英機

右訴訟代理人弁護士

香川公一

大阪市平野区平野西二丁目二番二号

被告

東住吉税務署長

白石勝

右指定代理人

森本翅充

川口秀憲

中西俊章

滝川通

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が、原告に対し、昭和五九年三月八日付でした昭和五六年分及び昭和五七年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をいずれも取消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、アルマイト加工業を営む者である。

2  原告は、昭和五六年分、昭和五七年分の総所得金額及び所得金額を別表一の確定申告年月日欄記載の日に、その総所得金額欄、所得税額欄記載のとおり確定申告したところ、被告は、昭和五九年三月八日、同表の更正処分欄記載のとおり、各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各処分」という。)をした。原告は、同年四月二八日、被告に対し、異議申立をしたところ、被告は、同年六月一八日、右異議申立を棄却するとの決定をしたので、原告は、同年七月一六日、国税不服審判所長に対して審査請求をしたが、同所長は、右審査請求を棄却するとの裁決をし、右裁決書は昭和六〇年八月七日、原告に送付された。

3  本件各処分は、次の調査の経過のとおり、原告が被告の部下職員に対し原始資料も提示して実額の調査が十分可能となるような協力態勢をとっていたにもかかわらず、一方的に推計によって行なわれたものであり、適正手続の保障及び推計の必要性を欠いており違法である。また本件各処分は、事実関係を誤認しいずれも原告の総所得金額を過大に認定した違法なものである。

(一) 原告は、昭和五八年五月一一日、被告の部下職員渡部の税務調査に際し、常日頃、原告の経理その他事業に関することについて相談に乗ってもらっている者に来てもらって適正な調査に応じようとしたが、右渡部は立会人がいるから調査をしない旨述べて帰った。

(二) 被告は、同月一二日以降原告の取引銀行や得意先五、六件へ直接赴いたり、得意先一七、八件に照会文書を郵送したりして、反面調査を行った。

(三) その後、被告からはなんの連絡もなかったが、同年一一月初旬、突然被告の部下職員堀が調査を引き継いだといって来訪し、その際立会人がいると述べて調査をしないで帰ってしまった。

(四) 右以外に被告の部下職員の原告事業所等への臨場はなかった。

4  よって、原告は、被告に対し、本件各処分の取消を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1、2の事実は認める。

2  同3の事実及び主張は争う。

三  被告の主張

1  本件各処分に至る経緯

被告は、原告が提出した本件係争各年分の確定申告書に記載された所得金額が適正なものか否かを確認するため、部下職員に原告の所得税調査にあたらせた。右部下職員は、昭和五八年四月二五日から昭和五九年二月末ころまで一〇回以上にわたって大阪市平野区加美正覚寺四丁目二番十五号の原告の事業所(以下「原告事業所」という。)に臨場し、原告または原告の事業に従事している原告の実弟津田候治に対し、本件係争各年分の事業所得の金額の計算の基礎となるべき帳簿書類等を提示するよう調査への協力方を要請した。しかし、原告や津田候治は、調査に関係のない第三者の立会を要求し、右部下職員の帳簿書類の提示要請に対し、「帳簿等は保存しているがみんなのいる前でなければ見せられない。」と述べてこれに応じず、部下職員が、調査に無関係な第三者の立会のない状態で帳簿書類の提示を行うよう調査への協力方を要請したのに対しても、「立会を認めないとはどのような条文に書いてあるのか。」などと述べて、調査に協力しようとしなかった。そこで、被告は、やむを得ず、推計により所得金額を算定することとし、原告の売上先等を調査した結果に基づいて、本件係争各年分の所得金額を算定したところいずれの年分も原告の申告額を上回ったので本件各処分をした。

2  事業所得金額

原告の本件係争各年分の事業所得金額は、次のとおりであり、その明細は、別表二記載のとおりであって、右各事業所得金額の範囲内でなされた本件各処分に違法はない。

(一) 昭和五六年分 七〇一万九七三円

(二) 昭和五七年分 六〇〇万一三七七円

3  事業所得金額の内訳

(一) 売上金額

原告の本件係争各年分の売上金額は、次のとおりであり、その明細は、別表三記載のとおりである。

(1) 昭和五六年分 二二八二万六七四九円

(2) 昭和五七年分 二二三三万七七二二円

(二) 算出所得金額

原告の本件各係争各年分の算出所得金額は、売上金額に別表四、五記載の各同業者(以下「本件同業者」という。)の算出所得率(売上金額から仕入金額、外注費及び一般経費を控除した金額の売上金額に対する割合)の平均値である昭和五六年分については、五六・一二パーセント、昭和五七年分については、五四・六〇パーセントを乗じて算出したもので、その金額は次のとおりである。

(1) 昭和五六年分 一二八一万三七一円

(2) 昭和五七年分 一二一九万六三九六円

(三) 特別経費

(1) 給料賃金

本件係争各年分の給料賃金は、次のとおりである。

<1> 昭和五六年分 二一一万一〇四〇円

<2> 昭和五七年分 二三〇万八〇〇〇円

右昭和五七年分は、津田候治が大阪市に申告した給与収入金額八二万円と原告が審査請求の際に申立てた津田候治以外の従業員に対する給料賃金一四八万八〇〇〇円との合計金額であり、右昭和五六年分は、昭和五七年分の給料賃金二三〇万八〇〇〇円を津田候治の大阪市に対する申告による給与収入金額の伸び率(昭和五七年分の申告額八二万円の昭和五六年分申告額七五万円に対する割合)一〇九・三三パーセントで除して算出した金額である。

(2) 支払利子割引料

本件係争各年分の支払利子割引料は、次のとおりであり、いずれも大阪中央信用金庫平野支店に支払った金額である。

<1> 昭和五六年分 四万八三五八円

<2> 昭和五七年分 四万九〇一九円

(3) 支払地代家賃

本件係各争年分の支払家賃は、次のとおりである。

<1> 昭和五六年分 三二四万円

<2> 昭和五七年分 三四三万八〇〇〇円

右昭和五六年分は、西野美伸に対する原告の事業所の賃料であり、右昭和五七年分は、右賃料三二七万円と古川利一に対するガレージ使用料一六万八〇〇〇円との合計額である。

(四) 事業専従者控除額

本件係争各年分の事業専従者控除額は、原告の妻津田佳子についての分各四〇万円である。

4  推計の合理性

被告は、原告の本件係争各年分の事業所得金額を算定するに当り、同業者の算出所得率の平均値を適用したが、その同業者の選定の経緯及び推計の合理性の存在については次のとおりである。

(一) 大阪国税局長は、原告の納税地を所轄する東住吉税務署長及びこれに隣接する生野、阿倍野、住吉、東大阪、八尾の各税務署長に対し、青色申告によって所得税の確定申告をしている者で、本件係争各年分において次の(1)ないし(5)のすべての条件を満たす者を抽出するよう通達指示したところ、別表四、五記載のとおり昭和五六年分は四名、昭和五七年分は五名該当する者があった。

(1) アルマイト加工業を営んでいること。

(2) 他の業種目を兼業していないこと。

(3) 年間を通じて事業を継続して営んでいること。

(4) 売上金額が一一〇〇万円以上、四六〇〇万円未満であること。

右売上金額の範囲は、事業規模の類似性を担保するため、被告主張の原告の売上金額を基準にして、上限を昭和五六年分の約二倍、下限を昭和五七年分の約二分の一としたものである。

(5) 不服申立または訴訟係属中でないこと。

(二) 以上の抽出基準により抽出された本件各同業者は、業種、業態、事業所の所在地、事業規模等において原告と類似性を有する。また、その申告の正確性について裏付けを有する青色申告者であるから、これに基づき算出された数額は正確である。そして、本件各同業者の選定は、大阪国税局長が発した前記通達に基づいて前記各税務署長が機械的に前記抽出基準に該当する者のすべてを抽出することによって行われたものであるから、その選定には恣意の介在する余地はない。

したがって、本件各同業者の算出所得率の平均値には、正確性と普遍性が担保されているから、これを用いて、原告の本件係争各年分の所得金額を推計したことには合理性がある。

四  被告の主張に対する認否

1  被告の主張1、2の事実は争う。

2(一)  同3(一)の事実中、原告の係争各年分に別表三の認否欄に○印の記載のある売上(売上先及び売上金額)があることは認めるが、その余の事実は否認する。

(二)  同3(二)の主張は争う。

(三)  同3(三)の事実中、(1)のうち、原告の昭和五七年分の津田候治以外の従業員の給料賃金が一四八万八〇〇〇円であること、(2)の事実、(3)のうち、原告が昭和五六年に西野美伸に対して原告の事業所の賃料三二四万円を支払い、昭和五七年に右賃料三二七万円とガレージ使用料一六万八〇〇〇円、合計三四三万八〇〇〇円を支払ったことは認めるが、その余の事実は否認する。

(四)  同3(四)の事実は認める。

3  同4の事実及び主張は争う。

五  原告の主張

1  事業所得金額

原告の本件係争各年分の事業所得金額は、次のとおりであり、その明細は、別表六記載のとおりである。

(一) 昭和五六年分 三四万四四六二円

(二) 昭和五七年分 △一二四万四二九一円(△はマイナスを示す。)

2  事業所得金額の内訳

(一) 売上金額

原告の本件係争各年分の売上金額は、次のとおりであり、その明細は、別表七記載のとおりである。

(1) 昭和五六年分 二二八二万六七四九円

(2) 昭和五七年分 二二三三万七七二二円

(二) 仕入金額

原告の本件係争各年分の仕入金額は、次のとおりであり、その昭和五六年分の明細は、別表八記載のとおりである。

(1) 昭和五六年分 四八三万九七二二円

(2) 昭和五七年分 四八七万三八〇九円

(三) 一般経費

原告の本件係争各年分の一般経費は、次のとおりであり、その昭和五六年分の明細は、別表九の一ないし三、昭和五七年分の明細は、同表一〇の一ないし三各記載のとおりである。

(1) 昭和五六年分 一一〇五万五二〇七円

(2) 昭和五七年分 一二一三万三一八五円

(四) 特別経費

原告の係争各年分の特別経費は、次のとおりであり、そのうち給料賃金、支払利子割引料の明細は、別表一一(昭和五六年分)、同表一二(昭和五七年分)各記載のとおりである。

(1) 昭和五六年分 六一八万七三五八円

<1> 給料賃金 二七三万一〇〇〇円

<2> 支払利子割引料 四万八三五八円

(3) 支払地代家賃 三四〇万八〇〇〇円

(2) 昭和五七年分 六一七万五〇一九円

<1> 給料賃金 二六八万八〇〇〇円

<2> 支払利子割引料 四万九〇一九円

<3> 支払地代家賃 三四三万八〇〇〇円

(五) 事業専従者控除額

本件係争各年分の事業専従者控除額は、原告の妻津田佳子についての分各四〇万円である。

六  原告の主張に対する認否

1  原告の主張1の事実は争う。

2(一)  同2(一)の事実中、別表三の認否欄に○印の記載のある分以外の売上金額は否認する。

(二)  同2(二)の事実は否認する。

(三)  同2(三)、(四)の事実中、津田候治以外の従業員の昭和五七年分の給料賃金、支払利子割引料、昭和五六年分の事業所の賃料、昭和五七年分の支払地代家賃以外の経費は否認する。

(四)  同2(五)の事実は認める。

第三証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  税務調査の適法性及び推計の必要性

原告は、本件各処分は、原告が被告の実額調査が十分可能となるような協力態勢をとっていたにもかかわらず、一方的に推計によって行なわれたもので、適正手続の保障及び推計の必要性を欠き違法である旨主張するので、まず、この点について判断する。

1  証人堀茂仁の証言、原告本人尋問の結果を総合すると、次の事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

被告は、原告が提出した昭和五五年分及び本件係争各年分の確定申告書に記載された所得金額が適正なものか否かを確認するため、部下職員渡部に原告の所得税調査にあたらせることとした。右渡部は、昭和五八年四月ころから同年六月ころまでの間、原告事業所に三回臨場し、原告に対し、調査の協力を求めて帳簿書類等の提示を要請したが、原告は、民主商工会の事務局員の立会がなければ提示できないとの態度をとり、一方、渡部は、その立会を認めなかったので、帳簿書類等の提示を受けられないまま、原告の取引先等に対する反面調査に着手した。その後、右渡部の後任者の被告部下職員堀茂仁は、同年一〇月二七日、原告事業所に赴いて、前任の渡部を引継いで原告の所得税調査を担当する旨を原告に伝えて、帳簿書類等の提示等調査に協力するよう求めたが、原告が、「経理は弟の津田候治が担当していて自分はよくわからない。」、「今日は忙しいから日を改めてほしい。」旨述べたので、その日は辞去した。右堀は、原告の都合を聞いて、同年一一月七日、原告事業所を訪れると、原告と津田候治のほかに民主商工会の事務局員の岡山が同席していたので、原告に対し、資格のない第三者である岡山を退席させるよう求めたところ、原告から、岡山の立会を許さないことや、前担当者の最後の来訪から長期間経過した後に調査に赴いたことについて抗議を受け、これに対する説明等をしたが、原告の納得を得られなかったので、それ以上の調査の進展が期待できないと判断して辞去した。堀は、同月一五日、原告事業所に赴き、原告に対し、帳簿書類等の提示を求めたが、原告は、多忙を理由にしてこれに応じず、また堀の帳簿書類等を持ち帰らせてほしいとの申出にも応じなかったので、堀は、日を改めることとして、その日の調査を打ち切った。堀は、原告の都合を聞いて、同月二五日、原告事業所を訪れたが、原告、津田候治のほかに前記岡山が同席していたので、前々回同様同人の立会の可否についての議論に終始して、その日も帳簿書類等の提示を受けられなかった。堀は、その後、昭和五九年二月一六日、同月一七日、同月二七日、原告事業所を訪れ、原告に対し、反面調査等によって把握した所得金額に基づいて修正申告するように勧告するとともに、帳簿書類等を提示するよう、また、多忙ならば、帳簿書類等を預からせてくれるよう求めたが、原告はこれに応じなかった。被告は、部下職員の原告に対する右調査の経過から、原告からは第三者の立会なしに帳簿書類等の提示を得られないと判断して、推計によって原告の所得額を算出し、同年三月八日付で本件各処分をした。

2  ところで、所得税法二三四条に基づく質問検査の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については、客観的に判断して具体的な必要性がある場合には、その相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限ある税務職員の合理的な選択、裁量に委ねられているものと解すべきである。

これを本件についてみると、成立に争いのない乙第一八、第一九号証によれば、原告が被告に提出した本件係争各年分の所得税の確定申告書には所得金額の記載があるだけで、収入金額、必要経費等所得金額算定の基礎となる明細の記載がまったくなかったことが認められるから、本件においては客観的に判断して質問検査の必要性を認めることができる。また、実定法上、質問検査に際し、第三者に立会わせるべき旨定めた規定はなく、被告の部下職員が、原告の求めた民主商工会の事務局員の立会のもとでの調査を拒否したことは税務職員の裁量に委ねられた権限の範囲内の行為であって、これをもって、右にいう社会通念上相当な限度を逸脱した行為とすることはできないし、本件全証拠によっても、ほかに本件の税務調査手続に違法な点があることを認めることはできない。

3  前記1の認定事実によれば、被告は、原告の調査に対する協力を得られなかったため、原告の本件係争各年分の所得金額を実額によって把握することができなかったことが認められるから、右所得金額の算定を推計によって行う必要性があったものと認めることができる。

二  原告の事業所得金額

次に、原告の本件係争各年分の事業所得金額について検討する。

1  原告本人尋問の結果に弁論の全趣旨を総合すると、原告は、大阪市平野区加美正覚寺四丁目二番一五号所在の営業所・工場において、アルマイト加工業を営んでいる者であるが、その営業形態は、主として注文主から支給を受けた小物のアルミニウム製マーク類にアルマイト加工を施すことを請負い、注文主からその加工賃の支払を受けるというもので、右加工賃収入が売上となること、原告は、本件係争各年ころ、従業員として、常時、原告の実弟の津田候治ほか二名を雇用し、原告の妻を包装等の工程に従事させていたが、繁忙期には外注することもあったことが認められる。

2  売上金額

原告につき、本件係争各年分として別表三の認否欄に○印の記載のある売上(売上先及び売上金額)があったことは、当事者間に争いがなく、証人岸本卓夫の証言及びこれにより真正に成立したものと認められる乙第四、第五号証の各一、二、第六号証、第七号証の一、二、第八、第九号証、第一〇、第一一号証の各一、二、第一二号証に弁論の全趣旨を総合すると、原告について、同表のその余の欄記載の売上(但し、佐々木与治郎に対する昭和五六年分の売上金額は四六万三二〇四円である。)があったことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

そうすると、原告の本件係争各年分の売上金額合計は、次のとおりとなる。

(一)  昭和五六年分 二二七九万六七四九円

(二)  昭和五七年分 二二三三万七七二二円

3  算出所得金額(売上金額から仕入金額、外注費、一般経費を控除したもの)

(一)  証人岸本貞夫の証言及びこれにより真正に成立したものと認められる乙第一、第二号証の各一ないし六、第三号証によれば、被告の指定代理人であった岸本卓夫は、推計によって原告の所得金額を算出するのに必要な同業者の選定につき、原告と営業種目、営業地域、事業規模等の類似性を担保するため、原告の事業所所在地を所轄する東住吉税務署長及びこれに隣接する地域を所轄する生野、阿倍野、住吉、東大阪、八尾の各税務署長に対し、大阪国税局長の一般通達に基づき、青色申告によって所得税の確定申告をしている者で、本件係争各年分において、アルマイト加工業を営んでいること、他の業種目を兼業していないこと、年間を通じて事業を継続して営んでいること、年間の売上金額が、被告が把握した原告の売上金額のうち少ない分である昭和五七年分の約二分の一の一一〇〇万円から多い分である昭和五六年分の約二倍の四六〇〇万円までの範囲であること、不服申立または訴訟係属中でないことという基準のすべてに該当する同業者の全部につき、売上原価、売上金額(決算書に記載されている差引原価、外注費の合計額)、一般経費(決算書に記載されている経費の額の合計額から外注費の額及び給料賃金・利子割引料・地代家賃・建物減価消却費・固定資産除却損・税理士報酬・貸倒損失等特別経費の額を控除した金額)を記入した同業者調査表の作成、提出を求めたところ、大阪国税局長に対し、昭和五六年分について、東住吉、東大阪各税務署長から各一件、生野税務署長から二件、合計四件の、昭和五七年分について、東住吉税務署長から一件、生野、東大阪各税務署長から各二件、合計五件の同業者調査表が送付されたこと、右同業者調査表に基づいて、右各同業者の算出所得率の平均値を算定すると、別表四、五記載のとおり、昭和五六年分が五六・一二パーセント、昭和五七年分が五四・六〇パーセントとなることが認められ、右認定に反する証拠はない。

(二)  右(一)の認定事実によれば、原告の所得を推計するための算出所得率を算定する目的で被告が選定した同業者の選定基準は、業種の同一性、事業場所の近接性、業態、事業規模の近似性等の点で、同業者の類似性を判別する要件としては合理的なものであり、右同業者の選定にあたって被告の恣意が介在する余地は認められない。また、右各同業者は、いずれも一年間を通じて事業を継続する青色申告者であって、その申告が確定していることから、右各同業者の算出所得率の算定根拠となる資料は正確性の高いものであり、かつ、選定された同業者数は、昭和五六年分については四件、昭和五七年分については五件であって、同業者の個別性を平均化するに足りる件数であると考えられる。

(三)  そこで、原告の本件係争各年分の算出所得金額を、前記2の原告の本件係争各年分の売上金額に右(一)の本件各同業者の右各年の算出所得率の平均値を乗じて算定すると、次のとおりとなる。

(1) 昭和五六年分 一二七九万三五三五円

(2) 昭和五七年分 一二一九万六三九六円

4  特別経費

(一)  給料賃金

原告の昭和五七年分の津田候治以外の従業員の給料賃金が一四八万八〇〇〇円であることは、当事者間に争いがなく、右事実及び弁論の全趣旨を総合すすると、昭和五六年分の津田候治以外の従業員の給料賃金は一五三万一〇〇〇円(原告の主張額)であることが認められ、右認定に反する証拠はない。

また、成立に争いのない乙第一四、第一五号証によれば、津田候治は、大阪市に対し、昭和五六年分の収入金額として七五万円、昭和五七年分の収入金額として八二万円を申告したことが認められ、右事実によれば、津田候治の給料賃金は、昭和五六年分が七五万円、昭和五七年分が八二万円であると認めるのが相当である。

原告は、津田候治の本件係争各年分の給料賃金が各一二〇万円であると主張し、原告本人尋問の結果中には右主張にそう供述部分があるが、右事実を裏付ける賃金台帳その他の帳簿等の書証は一切存しないことや前記のとおり津田候治の大阪市への申告額は右主張額と相違していることなどに照らすと、右供述だけでは同人の給料賃金を認定するには足りないし、他に同人が前記認定の申告額を超える給料賃金収入を得ていたことを認めるに足りる証拠も存しない。

そうすると、本件係争各年分の給料賃金額合計は、次のとおりとなる。

(1) 昭和五六年分 二二八万一〇〇〇円

(2) 昭和五七年分 二三〇万八〇〇〇円

(二)  支払利子割引料

本件係争各年分の支払利子割引料が、いずれも大阪中央信用金庫平野支店に支払った次の金額であることは、当事者間に争いがない。

(1) 昭和五六年分 四万八三五八円

(2) 昭和五七年分 四万九〇一九円

(三)  支払地代家賃

原告が昭和五六年に西野美伸に対して原告の事業所の賃料三二四万円を支払い、昭和五七年に右賃料三二七万円とガレージ使用料一六万八〇〇〇円、合計三四三万八〇〇〇円を支払ったことは、当事者間に争いがなく、右争いのない事実及び原告本人尋問の結果に弁論の全趣旨を総合すると、原告は、昭和五六年に、事業用車両保管のためのガレージの使用料として一六万八〇〇〇円を支払ったことが認められ、右認定に反する証拠はない。

そうすると、本件係争各年分の支払地代家賃の合計は次のとおりとなる。

(1) 昭和五六年分 三四〇万八〇〇〇円

(2) 昭和五七年分 三四三万八〇〇〇円

(四)  特別経費合計額

以上のとおり、原告の本件係争各年分の特別経費の合計額は、次のとおりとなる。

(1) 昭和五六年分 五七三万七三五八円

(2) 昭和五七年分 五七九万五〇一九円

5  事業専従者控除額

本件係争各年分の事業専従者控除額が、原告の妻津田佳子についての分各四〇万円であることは、当事者間に争いがない。

6  以上の次第で、原告の本件係争各年分の事業所得金額は、昭和五六年分が、算出所得金額一二七九万三五三五円から特別経費合計五七三万七三五八円及び事業専従者控除額四〇万円を控除した六六五万六一七七円、昭和五七年分が、算出所得金額一二一九万六三九六円から特別経費合計五七九万五〇一九円及び事業専従者控除額四〇万円を控除した六〇〇万一三七七円となる。

三  原告の実額主張について

原告は、本件係争各年分の事業所得金額についてその実額を主張して被告の推計による所得金額の主張を争うが、前記認定に反する売上、特別経費の金額及びその必要経費の金額を認めるに足りる証拠はないから、右主張は採用できない。

四  よって、本件各処分は、原告の本件係争各年分の各事業所得金額の範囲内でなされたものであって、いずれも適法であるというべきであり、原告の請求は、いずれも理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき、行訴法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山本矩夫 裁判官 佐々木洋一 裁判官 植屋伸一)

別表1 申告・更正等の経過

<省略>

別表2

<省略>

別表3 原告売上金額明細表

<省略>

注(株)は株式会社、(有)は有限会社をそれぞれ表わす。

別表4 同業者の算出所得率表(昭和56年分)

<省略>

別表5 同業者の算出所得率表(昭和57年分)

<省略>

別表6

<省略>

別表7 売上金額(総収入金額)

<省略>

別表8

56年仕入

<省略>

別表9の1

56年一般経費

<省略>

別表9の2

56年一般経費

<省略>

別表9の3

56年一般経費

<省略>

別表10の1

57年一般経費

<省略>

別表10の2

57年経費

<省略>

別表10の3

57年一般経費

<省略>

※ 下取 300,000円 売却損55,712円

別表11

56年特別経費

<省略>

別表12

57年特別経費

<省略>

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